COFFEE&BOOKS ON THE PLANET

いつものカフェで、いつもの読書。読んだ本を紹介します。よろしければ。

生きる意味なんてなくていい

精神科医が教えるストレスフリー超大全』樺沢紫苑

チャンネル登録数47万人のYouTube「樺チャンネル」でも知られる精神科医・樺沢紫苑先生のベストセラーです。

ストレスフリーの基本は
1.不安を行動で取り除く
2.自力で解決できるようになる
3.他人の力を上手に借りる
4.生活を整えてちゃんと生きる
5.朝散歩をする

・人の悩みは、行動しながら解決していくもの。話す、書く、体を動かす。不安があるならば、まず「行動」すること。

・悩み解決のプロセスは、対処法や解決法を知り、それを実行するだけ。対処法を知る方法は、自分で調べるか人に相談するかの2パターンのみ。「こうすれば解決する」という明確な対処法、解決法がわかると、霧が晴れて目的地が見える。

・規則正しい生活をすること。睡眠、運動、食事。運動はセロトニンの分泌が活性化する。セロトニンは覚醒、気分、意欲と関連した脳内物質で、低下するとうつ的になってしまう。セロトニンは「朝日を浴びる」「リズム運動」などにより活性化するため、朝起きて1時間以内に15〜30分の散歩をするだけで効果的な健康習慣になる。
朝散歩はメンタルにおける最強の健康法である。


ストレスに苦しみ、生きづらい時に
とっても頼りになる本です。

大丈夫、あなたならできるよ

『一心同体だった』山内マリコ


10歳から40歳まで。
女同士の友情と生きざまを描いた全8話の連作短編集。

ロンド形式でバトンをつなぐ、女同士の友情物語』

と帯にもあるように、リレーのようにつながっていく
濃くて、繊細で、尊い人間関係。
 

「女の友情はハムより薄い」とは言うけれど、
好きなもの、嫌いなもの、境遇、ライフステージなど
感性や価値観が同じ2人なら、一心同体になれるのかもしれない。
 

2人でいれば無敵だった。
2人でいれば楽しかった。

そんなふうに思える時期がきっと誰にだってある。
かけがえのない時間だったと、後になって気づくもの。

小学校時代なんてものは、取るに足らない人生の前章に過ぎなかったことがよぉくわかる。
全体的に見ればおおらかで牧歌的な場所だった。

中学校はそうはいかない。
ここでの評価は基本的に、異性から見て魅力があるか否かだ。

高校時代は青春を満喫した最高の思い出。
でも卒業したら女子高生のときみたいに、世の中をナメた態度は許されない。

大学生になり、夢を持ってここに来たけれど、思ったようにはいかない現実。自分がなにをしたいのか、なにをしにここまで来たのか。こんなはずじゃなかったんだけど、なんか違うなと思いながら時が過ぎる─。
 

仕事、結婚、妊娠、出産、家事育児、離婚。
女の人生は波瀾万丈。
 

『ディアガール おんなのこたちへ』

  • エイミー・クラウス・ローゼンタール-

女の子たち、怖がらずに、人に質問したいことがあれば訊いていいよ。踊りたかったら踊っていいよ、嫌なときは嫌って言いなさいね、まわりを気にしないで、好きな服を着ていいんだよ、愚痴ばかり言ってるのがいちばんつまらないよ、あなたは大丈夫、あなたならできるよ。

正しさも、正解も、答えもない

『イノセントデイズ』早見和真


「主文、被告人を死刑に処する」

放火殺人事件の被告人・田中幸乃は
元恋人宅への放火、妻と幼児2人の3人を殺めた罪により死刑を宣告される。

犯行前に整形手術をしていたことからメディアは
「整形シンデレラ」と呼んで大きく報じた。
裁判員裁判において初となる「女」に対する死刑求刑には、社会的な注目が集まった。
 

死刑判決を言い渡された幸乃は
自分の人生をいっさい弁解せず
何ひとつ抗おうとしていない。
 

判決後、傍聴席を振り向き、誰かを見て
直後に笑みを浮かべた──。
 

田中幸乃のこれまでの人生に、
犯行の背景には何があったのか。

彼女の人生に関わった人々の想いが語られるたび
哀しい真実が浮かび上がってくる。
 

メディアで報じられる事件の背景には何があるのだろう?
真実は他にあるのかもしれない。
 

「いかにもやりそうな人だ」
 

印象だけでそんなふうに思ってしまう
何も知らないくせに。
 

真実が見えたとき、印象はガラリと変わる。

「なんでこんなことになってしまったんだ……」
 

事件の裏には、伝わっていない物語がたくさんあって、
きっと世の中は、そんな出来事で溢れている。
 

正しさも、正解も、答えもない
好みのタイプの小説です。

荻原浩の受賞作

『海の見える理髪店』荻原浩

6つの珠玉の短編集。
荻原浩さんが直木賞を受賞した作品です。

荻原浩"節"の特徴は、ユーモア&ハートフル。
わたしが小説の沼にハマるきっかけとなったのは荻原浩さんの本を読んでからです。
 

イヤミスなんて言葉もあるけれど、モヤっとしたまま終わるのは好きじゃない、という人にはおすすめの作家さん。

伝えたいメッセージがいつもあって
それをしっかり受け取りたいと思う。
 

──その理髪店は海辺の小さな町にあった。
白髪のめだつ店主は、高齢だが背筋はしゃきりと伸びていた。椅子に座ると目の前には大きな鏡。その鏡いっぱいに海が広がっていた。窓の向こうは遮るものがない。店主は僕の頭にだけ視線を集中させて、鏡ごしに話し続ける……。
 

店主が鏡にこだわるのには理由があった。
青年がこの理髪店を探しあてて訪れた理由も。
 

海の見える理髪店の、高齢の店主が青年の髪を切る。

たったそれだけの短編なのに、書かれていない部分にストーリーが見えてくる。
 
さすが、受賞作品です。

胸打つ深い愛の物語

『月の満ち欠け』佐藤正午


2017年の直木賞受賞作。

ほんの数ページでスッと惹き込まれる文章センス。
一文一文が伏線のように感じられて、どう繋がるんだろうなとワクワクしながら一気に読めます。
 

ファンタジーではあるけれど、
もしかしたらこんなことあるかもしれないな

と思えてくるなら
きっと、愛する人が頭に浮かんでいるのでしょう。
 
 

小学二年生の娘が急に "おとなびる"

クマの縫いぐるみをアキラくんと呼び、教えてもいない昔の流行歌を歌い、デュポンのライターを知っていて、思慮深い目をするようになった。

七歳のふつうの女の子を装って、演技しているのではないか?

ある日、娘はひとりで電車に乗って
高田馬場レンタルビデオ屋へと向かった──。
 
 

月が満ちて欠けるように、生と死を繰り返す。

何回死んでも生まれ変わってあなたの前に現れる。

  
"瑠璃も玻璃も照らせば光る"
つまらぬものの中に混じっていても、すぐれたものは光を当てれば輝いてすぐにわかる。
 

生まれ変わっても
あなたのことはすぐにわかるよ
 

"感動のファンタジーラブストーリー"
なんて言うには軽すぎる
 

胸打つ深い愛の物語。
 

映画版もぜひ。

長い目で、今を生きろ

日日是好日森下典子


大切に読みたい一冊。

世の中には「すぐわかるもの」と「すぐにはわからないもの」の二種類があるという。

著者にとってそれはフェリーニの『道』であり
『お茶』もまたそうだった。

したいことが見つからないまま焦り続けるより、何か一つ、具体的なことを始めた方がいいのかもしれない。

「お茶、いいかも……」
 
 

日日是好日(にちにちこれこうじつ)
毎日がいい日。
 

雨の日は、雨を聴く
雪の日は、雪を見る
夏には、暑さを
冬には、身の切れるような寒さを味わう
 

どんな日も、その日を思う存分味わう。

お茶とは、そういう「生き方」なのだ。
 

生きにくい時代を生きる時
真っ暗闇の中で自信を失った時
お茶は教えてくれる。

「長い目で、今を生きろ」と。
 

点と点が集まって、一本の線となる。

目の前の今を生きていれば、やがて線となって未来につながる。ということかもしれない。
 

この本は2002年に刊行されています。
コロナ禍よりも東日本大地震よりもずっと前。
 

今ならこの本に書かれていることが
体感として "わかるもの" になった気がします。
 

「長い目で、今を生きろ」

この言葉が胸に刺さる。



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多様性を考える

『正欲』朝井リョウ


読後の余韻がしばらく残るほど
読みごたえのある一冊でした。
 

自分は学校に行かない選択をした、という現在の状態にしか根差しておらず、十数年後、自分と同世代の人間がほとんど学校という場所に行かない年齢になったとき、この少年は何を声高に主張するつもりなのか──。


朝井リョウさんらしく気持ちいいツッコミが満載。
でも、その一方では逆の視点も持っている。

学校に行けなくったって、好きなものがあって、人との繋がりを保てていれば、どうにか生きていくことはできるんじゃないかなって──。
 

時代の変化や社会の流れに敏感で取り残されることなくうまく乗りながらも、常に客観的な視点を持つ。
そんな作家さんだなあと思います。
 
誰でも自分の考えを発信できる時代に、熱くなっている自分を冷静な目で見ているもう一人の自分がいつもいるような。そんなバランス感覚も必要です。
 

「自分は偏った考え方の人とは違って色んな立場の人をバランスよく理解してますみたいな顔してるけど、お前はあくまで "色々理解してます" に偏ったたった一人の人間なんだよ──」
 

自分の発するメッセージや行動が誰かにとっては有益だとしても、傷つく人がどこかにいるかもしれない。

そんな視点を持っていることが
多様性を考えるということなのかもしれません。
 

食べたい物が食べられない
行きたい所に行けない
認めてもらえない
恋人ができない
結婚できない

生きたいのに生きられない
 

満たされない欲求はたくさんあるけれど
いつでも誰でもどんなときも
 

好きな本を読むことはできます。