荻原浩の受賞作
『海の見える理髪店』荻原浩
6つの珠玉の短編集。
荻原浩さんが直木賞を受賞した作品です。
荻原浩"節"の特徴は、ユーモア&ハートフル。
わたしが小説の沼にハマるきっかけとなったのは荻原浩さんの本を読んでからです。
イヤミスなんて言葉もあるけれど、モヤっとしたまま終わるのは好きじゃない、という人にはおすすめの作家さん。
伝えたいメッセージがいつもあって
それをしっかり受け取りたいと思う。
──その理髪店は海辺の小さな町にあった。
白髪のめだつ店主は、高齢だが背筋はしゃきりと伸びていた。椅子に座ると目の前には大きな鏡。その鏡いっぱいに海が広がっていた。窓の向こうは遮るものがない。店主は僕の頭にだけ視線を集中させて、鏡ごしに話し続ける……。
店主が鏡にこだわるのには理由があった。
青年がこの理髪店を探しあてて訪れた理由も。
海の見える理髪店の、高齢の店主が青年の髪を切る。
たったそれだけの短編なのに、書かれていない部分にストーリーが見えてくる。
さすが、受賞作品です。
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